季節は冬へと変わっていた。
その頃になれば、私は段々とこの世界にも、お店にも、人間関係にも慣れてきて、キャストだらけの控え室での会話も入れられる余裕も出てきていた。
営業時間が終わると、周りのお姉さん達は、またこれからも仕事に行く。
化粧を慣れた手つきでささっと済ませるとアフターに行く準備をする。
中には、ホストやボーイズに一目散へと向かう女の子もいる中で、そんなお姉さん達を見ていると仕事熱心で次に繋げるには、こうゆうことが大切なのだと身に染みて来る。
「七海も一緒に行かない?」
フランクに話しかけてくれたのは、私がこの店に面接に来た初日、泊まる場所がなく困っていると
「うち来なよ」と寮の契約が済むまでの2日間泊めさせてくれたお姉さん。
お人形さんみたいに顔が小さく目鼻がはっきりしていて身長は165センチくらいだろう。
いかにもモデル出身を匂わせる外見を持ち合わせた香織さんだった。
「私の夢は世界を旅することなんだ」と香織さんは明確な目標を持ちこの世界で働いている24歳。
美人なのに、気さくな人柄でお客様からもダントツの人気ぶりで、控え室に貼ってあるお店のランキングの上位の女性。
香織さんみたいな人がお姉ちゃんだったら、良かったのになぁと、私はどこに居たって年月が経とうとやっぱり家族や流奈の存在がチラついてしまう。
脳裏によぎる度に胸がチクっと痛み、気持ちを切り替える事に必死だった。
「香織さん、今日はすみません。行くところがあって」
そう、はっきり断れば「そう、じゃあまた今度っ」なんて優しい笑顔を見せ、香織さんはお客さんの元へと、向かった。
私は別行動して渋谷へと繰り出して行った。



