「お疲れ様です」
「おう、お疲れ~!!七海ちゃん明日もよろしくね」

今日の売り上げはとてもよくて、とても気分が良い。

「お疲れ様~」
「お疲れ様ーーー」

ラストソングが流れる店内

こうして今日も終わり、みんないっせいに更衣室へと向かう。

「え~どこ行くー?」
「あたしは今日~会いに行っちゃう~!!」
「また、ホスト?また貢ぐの?」

更衣室の中で色んな会話が飛び交う中、私は独り携帯をバッグから取り出しそれを開く。

着信があったことと、メールがあったことを私に親切に教えてくれる。

この瞬間こそが、七海から奈月に戻る瞬間でもあり、出来れば目を閉じてしまいたい所。


"奈月?高校きてないよね!どうした?"

"ご飯食べてますか?"

"足りないと思うけど、お金少し振り込んどいたよ"

高校の友達、お母さん、めぐみから
心配するような連絡が届いてきていた。


そして、あの流奈からも……

流奈の名前を見た瞬間、手が固まり動かなくなり胸の鼓動が速さを増す。


『奈月が電話になかなかでないから、実家へ連絡してみたら…。なに?家出してるの?これ聞いたら掛け直して』

"必ず連絡ちょうだい。"

流奈からだけで着信は7件、、留守電1件
メール1件。

ここで普通に掛けなおすことは簡単だ

でももう少し、もう少し落ち着いたらもう少し、私がいい現状になってから。

きっと今じゃない。

ーーーー全消去しましたーーーー


自分を正当化しと友達、親、姉妹、流奈からのメールを削除する。


それを放り込むように雑にバッグへと投げると誰よりも早く着がえては、静かに更衣室をあとにした。


トイレに入り、化粧を直し、口にはキラキラするグロスをつけると鏡に笑って見せる。

そして今日も私は七海として自分を偽り続ける。


「おまたせ〜どこのお店で食事しよっか?」

「予約しといたよ!行こ」

お客様の腕に寄り添い暗闇にと消えていった

私は檻から逃げたウサギ。

大都会の暗い世界にひっそりと身を潜めていた。