お客さんと過ごす時間は長く感じた。
同伴の約束をして、おいしいと言われるお店で食事しても、まだまだ子供舌の私には味なんてわかったもんじゃない。
流奈のお母さんと作ったもんじゃが一番美味しかったなぁと思い出した瞬間
心地の良いあの空間が蘇ってきたりした。
だけど、それを必死に打ち消す……
そう、今の私に過去も未来も必要はないのだ。
"心ここにあらず"
そんな言葉があるけど、今の私はまさにその言葉が相応しい。
稼いだお金が通帳の中で増えていくたびに、私はそれを下ろす。
雑誌に載ってる服のブランドのお店に行って好きなように買い物して、お洒落する。
やっぱり何かが満たされない
どんなに時間をかけてメイクして髪をセットして着飾っても私の'表情"は変化しないままで、さえてない。
不自然な顔.....作り笑顔をしてもまったく目が"笑えてない"のだ。
喜怒哀楽が乏しい人間。
本当に魂をいれてもらったただの人形になってしまったのだろうか。
そんな自分の顔を見るのが嫌で表情が乏しくなった自身が怖くなっていき、自分の部屋には鏡を置くことしなくなり、メイクするときはとても小さな鏡でするようになった。
私は歌舞伎町という街で夜の蝶としてまた新しい仮面をつけていた。



