17歳の夏休み、私はただただ遊び呆けた。

バイトがない日の週末の夜には
お母さんに友達や先輩の家に泊まると嘘をつき、大体いつものメンツとクラブに繰り出していた。
外に出るころには明るい朝が私を迎えてくれていた。

そして昼間は友達や先輩の家で寝て、起きたら何食わぬ顔で自宅へと帰っていつも通りに過ごした。


家族には言えない私の悩みの1つの不眠の解消法はこれしかなかった。

私にとって家にいる時間は苦痛でしかない。
殺伐とした空気、たわいのないただの日常会話なんてない、だからその頃の私は、家は寝るだけの宿みたいな感覚でしかなかった。


友達や先輩と過ごしている時間は、何も考えないでいられる。

大好きな音楽が爆音で鳴り響いている世界に足を踏み入れれば、私がどんなに叫んでも一瞬でかき消される。

そして、限界まで遊び呆ければ、疲れて一瞬で寝れてしまうんだ。


こんなに素晴らしいことはなかった。

〖元気でやってるの?〗

時折、そうメールで流奈からのメッセージが届く。

【元気だよ!流奈は?】

〖なら良かった!うん、あたしは元気だよ〗

そのメールに返信はせず、いつも私から連絡を止めた。

そう、これ以上送ることは出来ない。

そして、流奈もそれ以上に突っ込んでくるような人じゃないことを私が一番よく知っていたから。

私はもう、流奈が知っている私じゃないのだ。

だけど、後ろめたさなんてなくなってきていた。

誰にも……

だって、どの私も私なのだから。


「もっし~!うん、うん、分かった!じゃあね」

そう、いつも同様支度をして、友達からの電話を切った瞬間、父親が帰宅して来て私とすれ違った。


「奈月!おい!ちょっとこっちに来い」

いつしか父親からは怒りがこもった言葉しか向けられることしかなかった。

今日はなんてタイミングが悪いのだろう……
なんて思って立ち止まっていると再びリビングの方から「奈月!!来いって言ってんだろ!」と大きな声で私の名前を呼んでいた。


リビングに向かう足取りはとても重い
説教以外ではお父さんに呼びだされることはないのだから。


居心地がいい空間のリビングなんて存在しなくて
私にとってのリビングはまるで、警察の事情聴取をうけるような部屋と化していた。