外に出ると自然と目を細めた。
朝からアブラゼミがやかましく鳴いていて、感じたくない大嫌いな夏を嫌でも感じさせられる。
朝から不愉快でしかない蝉だけど、確か「蝉って一週間の命なんだって~知ってた?」なんて流奈が言ってたことを思い出す。
そう、夏になると流奈を自然と思い出してしまう。
だけど私はあの日以来、流奈との連絡を絶っていた。
きっと流奈はおばあちゃんが亡くなったことによって落ち込んでいると思って〖落ち着いたら絶対に連絡してね〗なんて連絡をくれていた。
温かく見守って、そっとしておこうという流奈の気遣いなのも分かってる、きっと私に早く我が子を会わせたいのも分かっていた。
だけど、愛へのプレゼントは未だ部屋のクローゼットに閉まったままで、それを今渡しに行くことは出来ないのだ。
私は二度と会いたくなかった叔父との再会によって変わり果ててしまって、流奈と約束していた学校にさえ、ろくに行かなくなっている始末。
そんな裏切っている状態で電話することなんて出来なかったし、声を聞かれたら流奈なら全てを察知してしまいそうで怖かった。
そして何より、こんな私なのに綺麗な瞳の愛に会うことが怖かったんだ……
【早く着いちゃった~バスのターミナルのベンチにいるね】
今日も朝から学校へは行かずに、地元の友達、詩織と約束していた。
〖りょうかい~あと少しだから待っててね〗
携帯に入ってきたメールを確認すると"切"ボタンを押した。
そこに表示された7月20日という日付……
明日から夏休みを迎えるというのに、私は終業式の何時間さえも出席せずに今ここいいる。
こんなことしていることを流奈が知ったら……
なんて、一瞬だけそんなことも横切ったが、携帯を閉じた瞬間に忘れようと首をふり、携帯を雑にバッグへと閉まった。



