長いコールが鳴っていた

"忙しいよね……"

その間、私は叔父の話をまだ流奈には打ち明けてなかったのをハッと思い出した。

こんな話、聞かされた方もきっと辛くて重いに違いない……
流奈のことだから一生懸命、かける言葉を探すに違いない……

そんなことを考えながら、自然と通話終了ボタンを押していた。


えっーーー!!

手に握りしめていた携帯が小刻みにふるえると*流奈*と表示されている。

通話ボタンを押せば「奈月どした?」と息をきらしている流奈の声が耳の中に入ってくる。

「ごめんね、忙しいところに」

「全然、大丈夫っ!!どしたの?」

そういつだって、私達の電話の一声目は『どした?』になってしまうのだ。

きっと、自分が切羽詰まった時にだけ、限界の時にだけお互いを求めるのだから。


「流奈………あ、いや、ごめんね。夜急に電話なんて」

「なによ!遠慮しちゃってさぁ〜何があったんでしょう?」

図星だった

私は携帯を握りしめる力が強すぎて手が震えていた。

「流奈……っ、あの………ね……」
カンカンカンカンカンーーー♪

そう言いかかったとき、タイミングよく踏切の遮断機の音が鳴り出した。


「え?なに?奈月?!!!」
「うわーん」

その時電話の向こうで、生後1カ月になった愛が泣いている声も聞こえてきて、その瞬間私は我に返った。

「いやいや!やっぱなんでもない!ただ急に声が聞きたかっただけ」

一瞬、言ってしまいそうになった。

そんな自分にびっくりして、全てを呑み込んだ。

「愛っ!どしたの~♪抱っこするね~♪奈月?何なに?なんか変だよ、今なんか言いかけたよね?」

「ほんと平気!また連絡するね」そう伝えて一方的に近い形で電話を切っていた。

そしてそのまま私は電源をきったーーー。