私と父はおばあちゃんの棺の前で一体どれくらい立ち尽くしていたのだろうか……

もうそんなことすら分からなかった。

ただ言えることは悲しいということ。

人の死がこんなにも悲しいものなのだと、身近でおきると改めて感じてしまう。

日々生活の中で、それはいつも当たり前で気づかないことが沢山ある。



それに、久々に父とこんなに長い時間一緒に過ごしている気がして、こうゆう風にならないと作れない時間だったのかと思うと、本当に色々と考えさせられる。


ただただゆっくりと時間は過ぎていた。

その時、後方から誰かが近づいてくるのが足音で分かった。


「アニキ!久しぶりだね」


後方から聞こえた声に父は振り向くと、無言で手を挙げた。


ーーーーーーっ!!!!


振り返った瞬間、薄い刃物で背を撫でられるような戦慄が体を突き抜けて、麻痺した心に一瞬で悪夢のような恐怖が私を襲った。

もう、顔をみることはできないと思った。

そのまま視線を落とすと、なんとも言えない感情が私を壊していく。


「おう、久しぶりだな……葬式で再会するとはな」

「あぁ。」

久々の再会をはたした2人、父親と叔父が私の目の前に並んでいる。

「奈月、叔父さんだぞ?挨拶しろ」

何かを口にしたら、私はこの人を殺ってしまうかもしれないと思った。

数分前まで恐怖で脅えていた私は、奴の気味悪い声が耳に入ってくる度に怒りへと変化していく。

「………ちは」

「え?奈月……?随分と変わったな」

叔父は最初気づいていなかったようだった。

こんなにメイクして仮面をつけているから、きっと面影なんて無いのだろう。

もはや、私にびっくりしたような声をしていた。


「トイレ行ってくるわ」挨拶もろくに出来ず、私は無意識にその場所から逃げ出すことで必死だった。