「はぁ……」


あの日から、私はおかしい。

それなのに、当の本人はいつもと変わらずで学校でも相変わらず私にちょっかいを出しては、話しかけて来る。

そして、あの日のことを一切触れては来ないし、もちろん私も触れたりなんてしない。


それでも、あの日のことがまるでなかったかのような陽平の態度に、なんだか拍子抜けしてしまうし、あれは嘘だったのか?と思わせてしまう位だった。


そもそも、キスくらいでこんなにも私の脳内が陽平だらけになっていることがおかしいのだろうか……。


目の前で、聡とじゃれ合っている陽平を見ていると、なんだか胸が締め付けられる。


私はどっちを目で追っているのだろうか……。

いや、私はずっと聡が好きだ……。

あれはきっと、事故でなかったことになるのだろう。


2人から目を離して、下を向きながら教室に戻ると静かに自分の席へとついた。


「一緒になるといいね!!」


「えっ?」


そう気が付けば、目の前には陽平がいて私にこっそりと耳打ちをした。


「さーて、席に着け~!!!学活を始めるぞ~!!前を向け~!!」


「お~い!いいか?内田……どこ向いてる」その言葉に、いっせいに私の方へとみんなの視線が集まる。

「えっ?あ、はいっ!!!」


そう答えると、そんな私を見て慌てて席に着いた陽平はクスクスと笑っていた。


陽平が耳打ちしてきたことが気になりすぎて、私の体はすっかり陽平がいた方に向けられていて私は先生の話など全く聞いてなかった。


"くっそ……アイツめ……"


そう思いながらも、私は先生の方へと目を向けた。