[おばあちゃんの葬儀が終えたら、愛を見に行くね〕

と、流奈へ送ると静かに携帯を閉じた。

生まれて来た愛おしい命
消えゆく悲しい命

皮肉なものだ

どちらも同じもので、だけど同じではない

喜びと悲しみ

感動と失望



おばあちゃん……。

私の祖母はとても明るい人だった

夏休みに遊びにいくと必ず大きなスイカを用意してくれ、お腹がはちきれそうになるくらい色んな料理でもてなしてくれた。

おばあちゃんの怒った顔なんて一度も見たことがない。

いつもニコニコしていて近所付き合いもよく、楽しそうにしている姿しか知らない。

「久しぶりに今年の夏休みおばあちゃんちに遊びに行こうかな〜」

なんて、私は春樹に話していた。

「そうだな、たまには顔だしてやれよ!」

「んまぁね、新幹線代結構かかるからなかなか行けなくて」そんな会話をしていた数週間前。


妹の入院を機にうちの家族は誰も行っていなくて、夏休みが近づくとたまにおばあちゃんをただ一人思い返していた。

最後に行ったのは中学2年の冬休みだったような気がする。

田舎に住んでいるから私みたいな私服が派手な孫が来ていたら、それはそれは目立つだろう、なのに小さなスーパーにも一緒に買い物行ってくれたんだ。


おばあちゃんは私の見た目が変わろうと変わらず接してくれた


スーパーの帰り道、おばあちゃんの手荷物を全て持ち、日が暮れる前の綺麗な夕日を浴びながら田舎道を一緒に歩いた

そんな私も思春期に入ってからは、会話がなかなか出てこなかった。

おばあちゃんの歩幅に合わせることしかできないで、ゆっくりと歩いただけ

そんな時間が割と気に入っていたし嫌いじゃなかった。

無言でも私は一緒に歩いている時間が好きだった、おばあちゃんもきっとそうであったと勝手に信じている。


本当に突然のお別れになってしまった

"先のばしにいちゃいけないよ"

"時間はつくるものだ"

そんな言葉が脳裏に刻み込まれていた。

本当にそうだった、お正月にも会いにいけば良かった、春休みだってあったんだ。

後悔と悲しさで立ち止まった私の足は、もはや地面に張り付いたようだった。