「バイバーイ!!また明日ね!」

下駄箱を出るなり、私は駆け出した。

「おおう、奈月〜!何そんなに急いでるのー?」

「ごめーん、急いでるから!!」

ホームルームが終わり教室を飛び出して、駅まで駆け足で行くのには理由がある。

そう、流奈の出産祝いを探しに。

別に今日渡しに行くわけでもないのに、なぜだか昨日、流奈から連絡貰ってからは、今日の帰りに選びに行くと決めていた自分がいる。

わくわくが止まらないのだ。

学校帰り行きかう道を駆け足で通り過ぎていく私は周りからしたら変人扱いに違いない。

むしろ自分だってこの年になってまで、息を切らし走ることなんてないと思っていた。

そう考えると、人間っておもしろい。


流奈に出会ってからは不思議な感情が芽生えている。

それがなんて言う感情なのかはまだ分からないけど、これはきっと悪いものではないことには違いないと思う。

自然と笑顔になっているだろう自分、そんな自分が少しだけ愛しい。


駅に着くころには、大嫌いなじっとりとする汗がワイシャツの下をつたっていて、それを気にすることなく電車に飛び乗り、目的地まで向かった。



電車を乗り継ぎ向かった先は大きなデパート。

そしてその中に入っているベビーグッズ売り場へと足を急がせた。

「何これ、ちいさっ…」

目の前にある靴に触れ、手のひらに乗せた。
想像していたよりはるかに小さいベビーシューズは見ているだけで優しい気持ちになる。

淡い色使いな洋服、なんとも可愛い小さいサイズのミトンや靴下……
見ていると早く愛に会いたくなる衝動にかられている自分。


どんな顔してるのかな
どれくらいの体重なのかな

まだ見ぬ女の子に胸を弾ませながら、プレゼントを選んでいた。

何度も手に取り、それを置き、ウロウロしている自分。

思えば、こんなに小さな子へのプレゼントなんて今まで選んだことがない。

優柔不断じゃなく、本来すぐに決められる自分も、この時ばかりは頭を抱えてしまう。

「プレゼントですよね?どのようなものをお探しでしょうか?」

そんな私に気が付いて声をかけてくれたお姉さんは、ベビー売り場には相応しい、優しく微笑む綺麗な顔立ちでいかにも育ちが良さそうに見えるお姉さんだった。