「もう!びっくりしたよ!陽平ったら~!!そろそろ私、帰らなきゃ!!」

顔を見ることなんて出来なくて……

でも、今言えることがあるならば今すぐこの場所から逃げてしまいたいと言うことだけ……。

「え!早くね?来たばっかりじゃん」

「たまたま、通りかかったから寄っただけでシャーペンの芯買って帰らないと怒られちゃうもん」

「あぁ、たまたま……ね。買い物一緒に行こうか?」

「大丈夫です!また明日学校でね」

「じゃぁね!!」と言って、軽く手を振ると陽平に背を向けた。

「おい!相変わらずそっけないな~!!」

そう後方から聞こえたが、私はもう振り向かずに早歩きをした。


ただ歩いているだけなのに、私の心臓はもはや早く動くことを止めようとせず、なんだか苦しい。

この苦しさは一体なんなのだろうか、私はそっと唇に手をあてた。


今でもはっきりと覚えている、陽平の唇の感覚……。


目を瞑れば、走馬灯のようにさっき少しだけ一緒にいた、陽平との出来事が蘇ってくる。

「ただいまぁ……」

気が付けば、私は家に帰り、自分の部屋に一目散に向かいベッドに身を投げた。

「あっ……いっけな……」


シャーペンの芯なんて買う事なんてもちろん忘れていて、私の明日の小テストなんて捨てだと思った。

そんなことより、もっと考えなきゃいけないことが沢山ある気がして、静かに目を瞑った。