そのまま私たちの席は沈黙が続いた。

沈黙なんてものじゃなく、ただただ静かに時が流れていた。


流奈がママ……
どう考えても全く想像がつかなかった。

喧嘩だってまだ派手にやってるような話も聞いたばかりだし、単車だって乗り回していて、とても落ち着くようには思えない風貌


まだまだ遊びたいざかりの16歳が、家事と育児に追われるなんて似合うはずはなくドラマの世界じゃあるまいし、現実にはそうありえることではない。

ましてや自分の身近な友達が
その道を選ぶだなんて一ミリも想像が出来なかった。

どうにかして、留まらせたいと何度も目の前にいる流奈を見て考える。

何より、子供が好きだとか聞いたことすらないのに。


それでも、今日の流奈はなんだか違ったんだ

私の知っている流奈が、少しだけ薄れている気がする

暫く会ってないせいなのか、それとも少し髪が伸びたせいなのか……


いや、きっとそんなことじゃない。

きっと流奈の決意した眼差しなんだと思う。


流奈の先々を考えたら安易に『頑張ってね!』なんて言いたくなかったが、彼女の目は決意に満ちていたのを見て次第に私の気持ちも変化が出てきくる。

いつにだって流奈は人の意見に反するのだ

流奈の人生だから、彼女なりの考えや気持ちがある中でこの決断にしたんだなと、
私は流奈の選んだ選択を応援しようと心に決めた。


目の前にあったアイスティーの氷は全て溶けていて、それを飲み干すと静かにグラスを置く。


「ねぇ……遅くなっちゃったけどさ……赤ちゃんおめでとう」

「……奈月」


少しだけ声が震えている気がした、それでも私はもう流奈の方を見ることが出来なくて、少しだけ流奈から視線を外す……。

「いやっその、本心はね、まだまた心配だよ」

「そうだよね分かってる」

「けど、私は流奈が決めた事を応援したい」

「…………とう。」

その後はもう、流奈の声がかすみ私の耳には聞こえて来なかった。