駅前のカフェは夕方の時間帯のせいか人で混み合っていた。
周りの目も気になってしまうのは私だけなのだろうか……。

そんなことを思いながら、流奈のお腹を意識してしまう。

"赤ちゃん…か…"

その事が頭の中でぐるぐると駆け巡る

「流奈は、ホットミルクどうぞ」

流奈の目の前に置いたそれを不服そうな目で私を見つめている「あまり好きじゃないのに」と呟きながら、口をつける……。

「体冷やしちゃダメだよ!」

その瞬間、沈黙が走り流奈は下を向いた。

流奈の気持ちなんてまだ聞いてない

どう思ってるか、その年で子供を産もうとしているのか、私は聞くことすら怖かった

「奈月はあたしのおかあさんかよ?!」

そんなこと言って流奈はふざけて笑っているが、この時ばかりはもう笑えない

不安なくせに…と。

目の前にいて、いつも通りを装って強がる流奈を自分と重ねてしまう

それが凄く心が痛い

私はアイスティーを口にすると、流奈も黙って再びホットミルクを口にした。

その姿を見て「飲んでるじゃん」と少し口元が緩まってしまったが、バレないように反対側に顔を背けて笑いをこらえた。


なるべく端っこの席を選び座って、何度もアイスティーを口にする
なんだかこっちの方が緊張してしまい、当の本人はなぜだかご機嫌な感じ

そんな流奈を見ながら大きく深呼吸をする
今一人の少女の人生の分かれ道に立たされているような感覚だった。

「……んで、電話の続きだけどさ……」

「産むよ!」

「えっ?」こんなにもこの話題を出すことを躊躇していたのに流奈の決意は、はなから決まっていたかのように、あっさりと返されていた。

「ちょっと待って……産むって……あのさ雄也くんとの子だよね?」

「うん」

「大変だよ。2人ともまだ16歳じゃん」

「分かってる」

「分かってるってさ……」大きなため息を吐きだしながら髪の毛をグチャグチャにする。

私にはやっぱり理解できない。


ただ、最初に掛かってきたときの流奈の声とは違い今、目の前で話してる流奈は、不安や迷いがなくなっている気がした。