私は、帰りのホームルームを抜け出し急いで彼女の元へ飛んで行った。

周りの音が聞えていて、どうやって電車に乗り継いだのかもはや分からなかった。
気がついたら、早く行かなくちゃいけないと、ただただ流奈のことだけを心配していた。


なぜかって、電話で聞こえてきた声が少し震えているような気がしたから。

流奈らしい声のトーンじゃなかったことくらい私には分かるのだ。

思えば流奈に「来て」なんて一言も頼まれてもいなかったが、私は勝手に体が流奈の元へ向かっていた。


流奈の地元の駅に降りると、改札口では流奈が笑顔で立って待っていた。

「奈月〜久しぶり!」

笑顔で手を振り迎えてくれている流奈が先程、妊娠したなど電話をかけてきた相手だなんて、まだ信じられない気持ちでもある。


「もう、行くよ」

「え、なになに?」

そのまま流奈の腕をひくと、私はお店を探しながら「話したいから、とりあえず、お店に入ろう」と流奈を無言で引っ張った。

頭の中が興奮状態で、この呑気に手を振ってる流奈もまた心配で、もうどこの店でも良かった。

すぐに目に付いた駅前にあったカフェへと入った。


「そこさ~この前、踏切事故あって、生首トイレに落ちてたらしいよ」

こんな時にまで冗談を話してくる流奈にまた大きなため息を吐き出すと、レジへと並んだ。

「アイスティーとホットミルクで」

「え?誰がホットミルク?奈月?」

「流奈だよ!」

「え、なんでアイスティーがいいのに」

横からブーブー文句を言う流奈をこの時ばかりはシカトした。