「今日は、ほんとありがとう」
家まで送ってもらう道中、私は運転している春樹の腕に自分の腕を絡ませながら声を弾ませる。
そして自分の膝の上にはブランドものの紙袋が置かれている。
その紙袋の中身は、春樹から貰ったお財布のプレゼントが入っていた。
「いいえ、奈月が喜んでくれたら本望だよ」
その瞬間、信号が赤で止まり春樹の大きな手が私の頭の上にのせられポンポンと叩かれた。
子猫になった気分だ。
本当に楽しい時間なんてあっという間で、車の中から窓の外を眺めていると、このままどこか遠くに連れて行ってと言いたくなる。
「どした?」
「ううん、なんでもないよ!!」
春樹に何も悟られないように、私は笑顔を向けた。
「着いたよ」
春樹の唇が触れる……
「ありがとう、おやすみ春樹」
「じゃあね」
「今日は本当に幸せだった」そう伝えると車を降りてから再び春樹にキスをした。
バタンーーー!!
その車のドアが閉まる音は、毎回私を悲しみに突き落とす。
そして車のハザードランプの点滅が消えるまで、私は春樹の車を見送った。



