「今日は誕生日なんだから、不貞腐れないで可愛い顔して?」

春樹が優しく私の手をひくと、私は春樹の胸の中にすっぽりおさまった。

大きな背中に手を回せば、春樹もおもいっきり私を抱きしめてくれて、人のぬくもりを体中で感じていく……

この優しさが心地よい

この春樹の体温が私を溶かしていく……


「大好きだよ、奈月……」

「私も……」

その瞬間、自ら春樹の唇に自分の唇を重ねる……

「奈月、いやらしいよ……」

その声のトーンと甘い言葉で、私は感じていた……


もっと愛してほしい

春樹の愛で私の全てを満たしてほしい……

力強く回した腕がやがて春樹によってほどかれると、そのまま抱っこされてベッドの上に下ろされる。


「私のこと愛してる?」

「もちろん、凄く愛してる……」


負いかぶさってくる春樹にしがみつきながら、私は春樹を感じた。

愛がないと不安だった

自分の愛より、上回っていてほしい……
愛すより愛されたい……


常にそう思っていた。


誰かに必要とされてないと、壊れてしまいそうでこの世に存在する意味が分からなかったから。

家族から冷たい眼差しを受けるたび、
私なんて生きていない方がいいんじゃないか?と、寂しくてモヤモヤしていた気持ちはやがて孤独感となり、

愛情をくれる人の側にいることで、まだ生きていていいんだという安心感へと繋がっていた。

春樹が愛情をこめて言葉をささやいてくれる度に日常の不安を消し去ってくれていた。

私はこの言葉を投げてくれる春樹に対して次第に依存し始めていたんだ……。