誕生日だからといって、もちろん遅刻は許されない

いつも通り家を出て、満員電車に揺られ、友達と社交辞令のように挨拶をし、つまらない授業をこなす。

だけど今日はそれだけではない。


私は、放課後の予定をとっても楽しみにしていた。


「ありがとう春樹っ♪」

学校が終わると同時に、春樹が仕事を早く終わらせ近くまで車で迎えにきてくれていた。

「いいえ」

優しく笑う彼を見て、この人は私には甘いな……
きっと、私のいうことなら何でも聞いてくれる気がするな……

なんて思ってしまう自分がいて、この時ばかりは本当に車を持っている年上の彼でよかったと思うばかり。


私は慣れた手つきでドアを開けると、車に乗り込み冷えている車内に「最高~」と叫んだ。

「だろ?よし、行こうっ!!」

その言葉に、私は微笑んだ。

行先はもう決まっていた、今日は春樹の部屋で私の誕生日をお祝いして貰う。


学校から30分くらいで着き私は久々に春樹の家へあがりこんだ。


「奈月16歳おめでとう」

「へへっありがとう」

男の人にしたら、わりと綺麗にしてると思われる部屋。

どちらかというと私の部屋の方が殺風景でシンプルな感じがする。

洒落たガラスのテーブルの上には、大きなバースデーケーキが置かれていた。

真っ赤ないちごと、ブルーベリーがたくさん飾られていて、真っ白なホイップクリームで綺麗にデコレーションされている私の大好きなショートケーキ。


それを見るなり春樹に微笑むと、春樹は目じりが垂れて私を優しく見つめる。

「ハッピーバースデー奈月」

その瞬間、並べてあったろうそくにポケットから取り出したライターで1本1本火をつけてくれている。


ぼんやりと温かさを増すろうそくをただ見つめていた。

「よし♪オッケイ~!!」

その瞬間、春樹はハッピーバースデーの曲を口ずさみ、私もあとに続く……。


「本当にありがとう、春樹……」

曲の終わりと共に、ケーキに立てられているろうそくを一気に吹き消し、それをただ見つめていた。

16歳になってことを実感し、なんだか15歳と16歳の分かれ目が凄く大きく感じ大人に一歩近づけた気がした。