なかなか家の中へ入ることが出来なかった。

きっと、外の世界にいると少しだけ現実から逃げ出せているような感覚になる。

そのまま玄関の外で、しゃがみ込むと、小さな箱を膝の上に乗せた。

そして突然来て、あっという間に姿を消した流奈からもらったネックレスを見つめる。



夜空に向けて、ネックレスをかざすと華奢なチェーンがユラユラと揺れる

真っ暗の月夜の背景に
確度が変わるたびにキラキラと輝きを放つ丸い輝くコインがまるで一番星に見えた。

「ったく……なかなかセンスいいじゃん!」

そう、うっすらと笑いながら、ネックレスを見上げていると、すこし遠くの方からバイクをふかす音が聞こえてくる。

「あっ……」

流奈が公園に着いたのだろう、安心しながら公園の方へと耳を澄ます。


風が心地よくて、このまま私もどこかに行ってしまいたくなる。

どんどん遠くなっていくバイク音を聞きながら、少しだけ寂しさが増した。

流奈は今、幸せなのだろうか……。

そんなことを思いながらも、流奈のプレゼントを見るなり笑顔に変わった。


この夜私は、なんと言葉にしたらいいのか分からない感情が目まぐるしく動きだし、その言葉たちの居場所がみつからないまま、そっと胸の中に閉まった。


ただ、一つだけハッキリと言えるとするならば、私の中で流奈の存在が確かなものに変わっていってることだった。