きっと何時間も悩んだだろうな。

私の為に時間を割いてくれて
遠いうちまで手渡ししに来てくれて

気の利いた言葉は思い浮かばずただ込み上げてくる感情を感じる。

「ほんと……うれし……」

もうそれ以上の言葉は浮かんでは来なかった。

流奈の顔を見てしまえば、涙が溢れてしまう、そう思うとなかなか顔を上げられない自分がいる。

ただ、そんな私を当然ほおっておくような流奈でもないことも十分分かっている。

「ちょっとーー!まさか泣いてるの?なっちゃん!」

スエットのポケットに手を突っ込んで、下を向いている私をニヤニヤと笑いながら覗き込む

「ぶっ!なっちゃんって誰よ!」

私は溢れそうになった涙を顔をあげる瞬間に手のひらで、吹き払いそれは一瞬で笑いに変わって行った。

私の涙を台無しにしてくれる彼女……

いや、本当は知ってる
いつにだってそう、流奈は、笑わそうとしてくれる、どんな時も……。


本当ズルイと思う。

いっつも私の弱ってる時に、タイミングよく電話してきたり

電話の話す声のトーンで私の表情すら悟ってくれたり

そんな時の優しさもわざとらしくない。


まだ出逢って日が浅いが、深い思い。

私のあの時の直感は正しかったんだ……。

流奈の噂を知ってる人は誰も近づかなかった。
私は地元が遠くて何も知らなかったからこそ噂話や、偏見もなく距離を縮められていた。


目の前にいる流奈は、世間的一般には怖そうなヤンキー娘

だけど、私にとっては優しい人、心地いい居場所。

久々に温かい気持ちを与えてくれた人

「あ!やべ!雄也から電話。そろそろ行くわ!」

流奈とのやりとりは15分くらいだったと思うが、私にはもっと短く感じた。

もっと一緒に話していたいと思った。

「うん!」

それでも、その気持ちを押し殺し、私は流奈に笑顔を向けると、「また電話する!!」と手を振って暗闇に消えていくまで後ろ姿を見送った。


「本当に忙しい人だ……」

クスっと笑いながら、手の中にある流奈からのネックレスを再び見ると、それを胸の前で強く握りしめた。