静まり返った部屋で、自分のベッドに腰かけると慣れた手つきで電話帳から名前を呼び出し通話ボタンを押す。
鳴り響いているコールを聞いていると、何回目のコールで私の電話に出てくれるのだろうと数えている自分がいる。
私にとって彼氏の存在は
自分が甘えたい時に猫のように甘えられて
欲しいものがあればおねだりして買ってもらう
どれだけ私を想ってくれてるか試したり、
自分が相手を愛するよりも与えられる愛しか興味がなかった
「………1、……2、………」
「もしもし奈月?」
合格だ……
「明日早く迎えにきて!すぐ会いたいの」
「奈月どうした?今日は仕事遅くなりそうなんだ、また喧嘩したの?」
「もう早くこの家から出て行きたい!!今日はもういい、だから明日早く迎えに来て」
「……もう少し頑張ってくれる?俺仕事頑張るから!お金貯まったら一緒に暮らそう」
「うん。ありがとう」
「明日早く迎えに行くな!今日はもう早く寝るんだぞ!」
「は〜い」
「じゃあな」
その言葉を聞いて私は切るボタンを押すと、大きなため息を吐きだし、そのまま電話帳を開き検索ボタンを押し続ける。
*流奈*
その名前が画面の中に出てきたとき、私の指が自然と止まった。
なんとも言えない緊張が走り、胸の鼓動が高鳴っていく。
彼女に連絡することなんて滅相もないことだ、それを彼女はどう思うのだろう……
そう思いながらも、私の指はもう通話ボタンを押していて、コールだけが鳴り響いていた。



