入学式から3週間ほど経つと、クラスの中はやりたい放題で、周りも自分と合った子と緒につるむようになっていた。


どんな時でも孤独で独りでいる子

一人でいることが嫌なのかトイレまで一緒に要求し行っている子

休み時間になってまでも教科書を開いて勉強している子

授業中だろうが休み時間だろうが、ひたすら寝ている子

彼氏とラブラブいちゃついている子


それを冷めた目で見ている冷静な自分は、やっぱりどこか違う世界にいるような感覚に陥っている。


「奈月~おはよぉ!!」


そう、朝からまともに来たことがない子の登場だ。


「流奈、もう3時間目始まるってば!」

「知ってるよ、そんなの~」

「明日は朝から来るんだよ!!」

「はーい!!そんでさ~これ見てっ!!」


全く、全然分かってなんかいやしない、きっと明日だってまともに来るはずはないだろう。


それでも、私は流奈が登校してくることを待っている自分もいる、もちろん本人には調子乗るから言わないのだけれど。


「なによ」と言おうとした瞬間に机の前に両開きにして置かれた雑誌のページ

「この人、ちょ~かっこいい!!思わず買っちゃったよ!!」

流奈が指さす男の人を見れば大きなため息を吐きだした。

「げっ、どヤンキーだ、ムリムリいかつすぎて、本当にムリだぁ~!!」


「え~奈月、見る目がない~!!」


どっちがだ、とも言いたくなったけど、間違いなく流奈とは絶対に好きな男のタイプは被ることはないと確信した瞬間でもあった。


「また、そんなことばかり言ってると雄也くんに怒られるよ!」

その瞬間、流奈の顔が引き締まる。

「なんで雄也のこと出すのよ~バレたら殺されるわ」


そう言いながら「それ持って帰れないからあげる!!」と机の上に置いたまま肩を落とし自分の席へと大人しく帰って行く流奈の姿を見て、私は笑っていた。


「いらないしっ!!」その言葉と共に3時間目が始まる合図のチャイムが鳴り響いていて、また催眠術のような古文の授業が始まった。