「ね!内田!」

「なによ?」

「さっきお前に話しかけてきたの、橋本流奈って名前じゃない?」

「そう」

そう言った瞬間、私と交互に彼女の方へと視線を動かしてる。

「ねぇ、だからそれが何?」

「あの人の彼氏ってさ雄也って名前じゃない?」

「いや!そんなん、なにも知らん!!」


いきなり小声で話し始めた木本は、よほど聞こえるのが嫌なのか、前のめりにもなって私に問う。

「なんで?手紙もらってたじゃん!仲良くなったんじゃないの?」

「私が昨日初めて渡しただけだよ!仲良くなろって」

「あ!そうなの?」

「確か彼氏すごい有名な人だよ」

「へぇー」


その瞬間、木本と一緒に再び彼女の方へと視線を向ける。


「だって橋本さんも、もろヤンキーじゃん。確かあの人ギャル狩りとかしてるって聞いたよ」

「ギャル狩り?」

「そう、ヤンキーの女はギャルが嫌いなんだよ。お前いつかはめられないように気をつけろよ」

「ははは!!されたらされた時よ!」

「いや笑いごとじゃねえだろう」

「私に見る目がなかったってそれだけでしょ」

「ったく、変わってるというか、肝が座ってるというか」

木本はため息を大きく吐くと、

あまり流奈の取り巻きに巻き込まれたくないような顔をして必死に私に訴えていた。


そんなことより私は『流奈』と呼んでいいと言われたことに嬉しくなっていて

ニヤけた顔が元に戻らなかった。