「あ!……」


制服の上着のポケットから差し出したのは一枚の紙

少し照れくさそうに、髪をクシャッとさせながら、私の机の上に無造作に置いた。


「も、もしかして手紙の返事書いてくれたの?」

「え?あれって手紙だったの?短すぎてビックリした」

「飽きないくらいがちょうどいいかなと」

「……なるほどね」


そんな風に短い会話のぎこちないやり取りをしていると、早くも4時間目の始まるチャイムの音が鳴り響いていた。

「あ、るなって呼んでいいから」

「えっ?」


いつしか、彼女に叫んでいた数学の先生の姿もいなくなっていて、気が付けば、古文の先生が教卓の前に立ってこっちを見つめていた。


彼女は私にそれだけ残し、自分の席に座るとまだ眠たそうに肘をつきながら黒板を見つめている。


そんな彼女を心配して、前に座ってるひかりが時折、後ろを振り返りながら一生懸命授業のサポートをしてたりして……。


私は、そんな二人の姿を遠目で見ながら、手渡しされた紙を握ったままで、今読もうか、後で読もうかなんて考えていた。