西校舎の佐倉くん




「薙原!」


「先生、すみません急に」


「ったく、ビビるだろ」


「どこ行ってたの、薙原さん?」


「・・・別に、どこでもないよ」


「返しにいってくるって言ってたけど・・・」


「もういいから、早く行こう?ほら、怖いし!」



高野さんたちや鍋屋先生が怪しむ前に、
彼に会ったことがバレる前に。


私はみんなを急かして、西校舎を後にした。



佐倉樹くん。


不思議な人だった。幽霊らしくないというか。

勝手なイメージで、幽霊って身体が透けていたり、宙に浮いていたり、そういうものだと思ってた。


あまりに人間味が強すぎて、言われなきゃ幽霊なんてわからない。



(明日も来よう・・・)



こんどは夜じゃなくて、夕方。放課後。
肝試しじゃなくて、佐倉くんに会いに。


みんなは西校舎を怖がっているけど、本当は少し風が冷たいだけで、怖くなんてない。


そこにいる幽霊も、実はとても優しい人で。



・・・だけど、あの噂は、怖い噂のままがいいと思った。
佐倉くんの存在は、誰にも知られたくない、と。