「あっ、実咲おかえり!ねぇ何話したの?!」
「・・・なんでもないよ」
「嘘!だってあの篠宮くんに呼び出されたんでしょ?!」
「・・・」
西校舎の話、といえば、また皐月は私を気遣うだろう。
「ほんと、大したことじゃなかった。」
「そっかー、残念・・・」
輝かせていた目を伏せて、肩を落とす皐月。
皐月は本当に純粋だ。無垢で、穢れを知らない。
「あっ!私友だちのとこ行ってくる!」
言いながら教室を飛び出していった皐月の背中に手を振りながら、少し罪悪感が胸に残る。
皐月に嘘はつきたくなかった。
だから、西校舎に行っていることも否定しなかったし、皐月に「もう行かないで」と言われても頷かなかった。
なのに、あんなに涙をいっぱいにためた目で訴えられたのを思い出したら、西校舎のことはもう言えなくて。
大した話じゃなかった、と嘘をついてしまった。
あれは相当大した話だ。
もしかしたら、佐倉くんの未練のヒントになるかもしれない。
・・・今日、佐倉くんに聞いてみよう。篠宮くんが会いたがってるから連れてきてもいいかって。
佐倉くんがどういう顔をするのか少し怖いけれど、少しでも未練に関係があるかもしれないなら、
きっと会ったほうがいい。
