颯太くんに連れられて、私たちは階段まで出てきた。
朝の早い時間、まだ多くの生徒達は登校していなくて、人気も無い。
「西校舎に行ったってほんとか?」
「・・・」
「西校舎に行ったのか?」
またその話か、と思わずため息が漏れる。
何となく、篠宮くんはそういうのを興味本位で聞いてくるような人じゃないと思ってた。
けど、違ったのかな───そう思ったときだった。
「西校舎に、誰かいなかった?」
「え?」
篠宮くんの目を見ると、すごく真剣な眼差しをこちらに向けていて。
縋られるようなその瞳に、吸い込まれそうになった。
「・・・誰かって?」
「・・・佐倉伊月」
「!!」
佐倉くんを知ってる・・・?!
「伊月は、俺の幼馴染みだったんだ。3年前に事故で死んだあの日・・・あいつ、朝から様子がおかしくて」
「え・・・?」
「伊月、当時好きな人がいたんだよ。でもその好きな人ってのが学校の先生だったみたいでさ・・・
その先生が異動にさせられたらしくて、それを自分のせいだって責めてた。自分がいなかったらあの先生を苦しめることもなかったって。
俺、当時まだ中学生のガキだったからさ・・・
いつも笑ってた伊月が泣いてるのを見て、なんて声をかけてやればいいのかわかんなくて、何もできなかった。
その直後に、伊月が死んで・・・まさか、って思って。だから・・・もし、西校舎に伊月がいたなら」
「ちょ、ちょっとまって」
佐倉くんは事故で亡くなったって鍋谷先生が言ってた。
不慮の事故だったって。
だけど篠宮くんの口ぶりは、
まるで佐倉くんが────
「佐倉くんが自殺だったってこと・・・?」
「・・・わかんねぇんだ。それがずっと引っかかってた。
なあ、伊月は、今もあの西校舎にいるのか?」
「・・・」
どう答えたらいいのか、わからなかった。
"佐倉くんはまだ西校舎にいる"
言ってしまっても良いのかもしれないけれど、簡単に言うのも気が進まない。
しばらく黙り込んだ私に、篠宮くんはどうやら何かを察したようで。
「・・・ごめん、変なこと聞いた。自分で確かめるから。忘れて。」
それだけ言うと、先に教室の方へ戻ってしまった。
