西校舎の佐倉くん



その次の日だった。
皐月が血相を変えて私の席へ駆け寄ってきた。



「実咲!!大丈夫なの?!」

「え?」

「昨日!実咲が西校舎に一人で入っていくのを見たって人がいて、すっっごい噂になってるよ?!」



嘘・・・見られてたの・・・?

周りには気を配っていたつもりだったのに。



「大、丈夫・・・だよ」

「ほんとに?!西校舎には幽霊が出るんだから、取り憑かれたら大変だよ、もう行かないでね?」

「取り憑かれるってそんな・・・」

「幽霊だよ?怖くないの?」

「・・・」



皐月は、佐倉くんを知らないから仕方ない。
幽霊なんて、私だって佐倉くんと出会う前までは怖かった。

信じていなかったけど、信じていないからこそ、

見えないから怖くて。


でも佐倉くんは違う。
怖くなんてない。



「とにかく、もう西校舎には行かないで。」

「・・・嫌」

「え?」

「嫌。西校舎には行くよ。今日も明日も。

・・・約束したから」



成仏を手伝うって。
桧山先生を連れて行くって。


「何言ってるの?!何かあってからじゃ遅いんだよ?!」

「何かってなに?」

「実咲・・・変だよ?どうしたの?あの日、初めて西校舎に行ってからずっと・・・。

ねえ、あの日、何かあったんじゃないの?」


「・・・皐月には分からないよ」




だって、視えないんでしょ?どうせ。
皐月は霊感ないし。怖がりで、都市伝説や作り話でも泣き出すくらいなんだから。

そんな皐月に、”幽霊に会いに行ってる”なんて言ったら、きっと泣きついてくる。


”もう行かないで”



皐月が言いたいこともわからなくはない。
私だって、逆の立場だったらきっと止めていた。


でも・・・約束を破るわけにはいかない。