「笑顔が・・・脆く見えた」
「え?」
「ユキちゃんは・・・桧山先生は、いつも笑ってたんだ。自分が疲れているときも。
僕が勉強で苦戦していたら、”仕方ないから教えてあげる”って笑いながら付き合ってくれた。
僕が人間関係で悩んでいたら、”自分以外の人間なんて気にしてても仕方ないでしょ!”って笑い飛ばしてくれた。
僕がピアノのコンクールで準優勝だったとき、”金より銀のほうが錆びにくいし!”って。
”伸びしろあるってことだよ”って。
・・・誰よりも笑顔だった。だけど、その笑顔はどこか脆く見えて。
僕が守ってあげたいって思った。」
桧山ユキ先生のことを話す彼は、
とても切なく微笑んでいて。
どうして・・・そんなに遠い目をして、窓の外を見つめているの?
「ユキちゃんはね、僕じゃない、別の人が好きだった」
「別の人・・・って・・・」
「・・・知ってたんだ。それが誰かってことも。
その人と話してるユキちゃんは、自然体だった。無理に笑ったり、気を遣ったりするんじゃなくて、
その人がいるってだけで笑ってた。
・・・僕がそんな存在になりたかったけど、僕には無理だった」
