「うるせぇ、てめぇこそ何者だ」

 ラグが一気に低くなった声で訊き返す。
 余計に暗殺者の声の高さが際立った。笑い声は特に。
 その声は先ほどまでのラグと同じ、子供特有の甲高さがあった。

「うーん、同業者になら名乗ってもいいかなぁ。うん、いいよね!」

 暗殺者はそう言うと、濡れたローブを脱ぎ犬のようにふるふると頭を振ってから口元の布もずり下ろした。
 現れたその顔はやはり子供――少年のものだった。おそらくは12、3歳。
 先ほど恐ろしいと感じた目はくりっと大きく、ごく普通の快活そうな少年に見えた。
 私は大きなショックを受ける。

(こんな子が、人を……?)

「ボクはルルデュール。ユビルスの術士だよ」
「!?」

 ラグが警戒を強めたのがわかる。

「ねぇ、キミ達は? どこの術士?」

 ルルデュールと名乗った小さな暗殺者は、小首を傾げ人懐っこい笑顔で訊いた。
 ラグは戦闘態勢をとったまま勿論無言。だが。

「俺はアルディート。ストレッタの術士だ」

 アルさんが手元に集中しながら、なんてことないようにあっさりと答えてしまった。
 ぎっとそんなアルさんを睨みつけるラグ。と。

「へぇ、凄~い! おじさんあのストレッタの術士なのー?」
「ちょ、ちょっと待て。誰がおじさんだ! 俺はまだ28。お兄さんだお兄さん!」

 余程心外だったのかアルさんが術をかけたまま声を荒げた。

「えぇ~、どっからどう見てもおじさんだけどなー。まぁいいや」
「良くねェ!」
「ねぇねぇ、そんなことよりおじさんは金髪のおにいさんの居場所知ってる?」

 ぎくりとする。
 やはり、この子は王子を捜しているのだ。