こちらに気付いて騒ぎ出した群衆の頭上を飛び越え、アルさんは鎮火し白い煙がもうもうと立ち上る詰所上空へ向かう。
その煙も私たちが乗っている風によって吹き飛び、しかも詰所の屋根は崩れ落ち中が丸見えの状態。
「セリーン!!」
そんな中目立つ髪色を見つけ、私は思わず叫んでいた。
セリーンがこちらを振り仰ぐと同時、私たちは中へと飛び込んだ。今の今まで燃えていた屋内は相当に熱いだろうと覚悟するが、不思議と外気とあまり変わらず、
「カノン!」
「アル!」
「ぶぅっ」
ずぶ濡れになったセリーン、そしてそのすぐ傍らにいた小さなラグとブゥが振り向く形で私たちを見た。
皆の無事な姿に涙腺が緩む。
「良かっ――」
「アホ! なんで来やがった!」
甲高い怒鳴り声にアルさんが私を降ろしながら答える。
「なんだよ、助けに来てやったんだろー。それにしてもお前まだその姿なのか。なんか長くね?」
「うるせぇ! 一度は戻ったんだ!!」
「あぁ、そゆこと。まぁ皆無事で……ってわけじゃないみたいだな」
アルさんの声音が急に低くなった。その視線を辿って私は悲鳴を上げる。
セリーンのすぐ後ろのテーブルの影で髭の男――確かラルガと言った――が全身傷だらけで倒れていた。ここからでは生死がわからない。――と、そのときだ。
「へぇ、術士かぁ」
場違いに楽しげな声音に驚き視線を上げる。
――なんで今まで気付かなかったのだろう。
ラグ達の向こう、扉の手前に黒い人が立っていた。
真っ黒なフードを目深に被り、口元も黒い布で覆ったその小柄な人物を見て、私ははっとする。
(さっき、ぶつかっちゃった子……!)



