
髪をドナと同じように二つに結んだ可愛らしい女の子だ。でも可哀想に、その大きな目の下にはくっきりとくまが見て取れた。
私はそんな彼女を少しでも怖がらせないよう笑顔でその場にしゃがみ込む。
「こんにちは、モリスちゃん」
同じ目線の高さでなるべく優しい声音で言った。すると、
「……こんにちは」
すんすん鼻を鳴らしながらもモリスちゃんは答えてくれた。
きっと笑ったらもっと可愛いのだろうと思っているとドナが楽しげに続けた。
「モリス、カノンはな、ばあちゃんと同じセイレーンなんだ。また歌が聴けるんだぞ」
「本当に?」
モリスちゃんが瞳を大きくして私を見る。
「あぁ。な、カノン」
「うん。おばあちゃんの歌とは違うと思うけど、モリスちゃんがゆっくり眠れるように一生懸命歌うからね」
そう言うと、モリスちゃんの顔に微かにだけれど笑顔が覗いた気がした。
小屋の中はとても殺風景だった。置いてあるものと言えば着替えなどが入っているだろう小さな棚くらいで、本当に生活に最低限必要なものしか置いていなかった。キッチンも無かったことから料理は外でするのだろうか。
モリスちゃんはようやく落ち着き今は敷布の上に横になっている。その両側で男の子二人、アドリ―君とリビィ君が寝転び優しく話し掛けていた。――二人が言うには、モリスちゃんのお兄さんは今丁度近くの川に水汲みに行っているそうだ。
そんな3人を優しく見つめていたドナに私は思い切って言う。
「ドナ、申し訳ないんだけど、歌っている間モリスちゃんと二人きりにしてもらっていいかな」
するとドナはきょとんとした顔をした。



