「何が愛の試練だ。明け方近くまで呻いてやがったくせに」

 アルさんが顔を引っ込めてすぐに呆れかえったようにラグが言った。

「そんなにだったんだ……。そういえば、私たちはセリーンの料理ってまだ食べたことないね」
「あいつ、確か美食家とか自分で言ってなかったか?」

 嫌そうに顔を歪めるラグ。

「た、食べるのと作るのとはまた違うんだよきっと! それに今回だけかもしれないしさ」

 そう苦笑しながらも、今後またこういう機会があったらまずアルさんに食べてもらおうと私は心に決めた。


 朝食は、黒いお豆と野菜が入った“お粥”だった。
 一見お赤飯にも似ているこの料理は、パケム島では朝の定番メニューであるらしい。
 元いた世界でもこれに良く似た料理を食べていたのだとドナに話したかったけれど、ツェリ達の手前口に出すことは出来なかった。
 私が美味しいと言うと、ドナは嬉しそうに笑ってくれた。

 そして、いよいよ出立のときが来た。