「モリスもこのお兄ちゃんと一緒に旅がしたいなぁ」

 思わずラグを見上げると、その顔が思いっきり引きつっていて危うく噴き出しそうになってしまった。

「モリスちゃんはこのお兄ちゃんが好きなんだね」
「うん、大好き! カッコいいもん!」

 言いながらモリスちゃんがラグの足に飛びついた。

「良かったね、ラグ。こんな可愛い子に大好きって言ってもらえて」

 にやにや笑いながら言うとラグはひきつった顔のままそっぽを向いてしまった。後ろ髪で寝ているブゥがその動きに合わせて揺れる。と、

「カノンちゃん起きたのかー? ――っと」

そんな声と共にアルさんがデッキに顔を出した。

「おはようございます。すみません、いっぱい寝ちゃって……?」

 アルさんが呆けたように私たちを見上げていて首を傾げる。

「アルさん?」
「あ、いや……3人でそうしてっと、なんか仲良い親子みたいだなと思って」
「え」

 私が間抜けな声を出すのと同時、ラグの足がアルさんの顔スレスレを掠めていた。

「くだらねぇこと言ってると落とすからな」
「あっぶねあっぶねー! 先輩の顔足蹴にしよーとするか普通!」

 舌打ちするラグを見て、本当に蹴り落とすつもりだったのだとわかる。
 モリスちゃんはそんな二人を見てキャッキャッと楽しそうに笑っていた。

「ったく。朝ご飯出来たからさ、3人とも下りてこいよ」
「はい。――あ、そうだ、アルさんもう平気ですか? お腹」

 自分のお腹を触りながら小声で訊く。

「あぁ、もう全然平気! ちーとばかり驚いたけどな、愛の試練だと思えばあんなの軽い軽い! んじゃ、下で待ってるからなー」