子供たちは私たちの後ろですでに寝息を立てている。
 今日一日大変な思いをしたからだろう、私たちがツリーハウスの中に入って一息つく頃には皆寝入ってしまった。

 ドナは私が部屋に入るなり、「ごめん!」と勢いよく頭を下げた。

「アタシ、カノンのこと信じないで酷いこといっぱい言っちまった」
「ううん、私もちゃんと話をしなかったのがいけなかったの」

 そう慌てて手を振る私に、ドナは尚も続けた。

「いいや、アタシの悪い癖なんだ。相手の話ろくに聞かないですぐにカッとなっちまうの、よくばあちゃんに注意されてたんだけどな。ホントに、ごめんな」

 そんなふうに言ってくれたドナに私は昼間よりももっと好意を覚えていた。
 この世界に来て、こんなに歳の近い子と話すのは初めてで。
 時間の許す限り、もっと色んな話がしたいと思った。

「ドナは最初からツェリが王子様だって知ってたの?」
「最初からっていうか、あいつ最初はずっとモンスターの姿だったんだよ」
「え、そうだったの?」

 ドナは頷きながら首にかかった笛を手にした。

「あぁ。だからこれ吹いて人間になったの見たときはもう、驚いたなんてもんじゃなかった」

 それはそうだろう。
 ラグの変化を見ていて少しは耐性がついている私でさえ、ツェリが人間に変わっていく様を見たときは口が開いたままになってしまった。

「あんなでかい図体してるくせにやたら人に馴れてるから、変だなとは思ってたんだけどさ」
「怖くなかったの? 初めて会ったとき」

 あの姿だ。普通なら恐ろしいと感じるはず。