「傷、本当に大丈夫なの?」

 私は彼に訊く。
 額に布が無い彼はやはり違和感があった。
 まるで別人に話しかけているような、そんな気さえしてくる。
 それだけ彼がずっと布を巻いていたということだ。

(それだけ、隠しておきたかったってこと……?)

「術で治せばいいものを」

 セリーンがぼそっと言うとラグはぴくりと眉を上げ、彼女を見た。

「もしまたあいつらが来たら、お前らだけでどうにか出来んのかよ」
「…………」

 さすがのセリーンも黙ってしまった。

 ――そうだ。アルさんはもう平気だと言っていたけれど、任務を遂行出来なかった彼らが絶対に戻ってこないとは言い切れない。
 もしそうなったら、アルさんが居ない今、ラグしか術士である彼らに対抗出来うる人物はいないのだ。

「さっきのサカードって人、アルさんの知り合いって言ってたけどラグも知ってるの?」
「オレは知らねぇ」
「そう……」

 声しかわからなかったけれど、戦うことにならなくて良かったと改めて思う。
 あの恐ろしいルルデュールの先生なのだ。更に恐ろしい力を持っているに決まっている。

「あのルルデュールと言ったか、あれも貴様と同じなのか?」

 続いてセリーンが訊ねた。

「あ?」
「あの姿でもう20歳過ぎていると言っていただろう」
「そうだ、私もそれ気になってたの。でも術は何度も使えてたし……」

 セリーンに便乗して私も訊く。今の彼にあの暗殺者の話をするのは少し気が引けたけれど。
 ラグは不機嫌そうに眉を寄せ、それでも答えてくれた。

「あのガキ、オレを見て笑ってやがったからな。同じってことは無ぇだろ。あれがはったりじゃねぇなら、そういう術士なのかもな」
「そういう?」