その後、アルさんがラルガさんを街へ送っていくことになった。
 街の人達へモンスターを倒したと言う話をするとして、術士であるアルさんがいた方が何かと説得力がある。

(あの時、アルさんが術で火を消しているとこ見てる人結構いたし……)

 と、そこでハッとする。

「そうだ、火事はおさまったのかな!?」

 山に向かうときに上空から見た赤々とした炎を思い出す。
 あれから優に一時間は経っているはずだ。

「多分、その辺りはサカードがうまくやってると思うけどな。もしまだ燃えてるようなら俺がなんとかしてくるわ」

 そう言い残し、アルさんはラルガさんを連れ空へと飛び上がった。
 彼らの姿が見えなくなった、丁度そのときだった。

「おい、モリス!?」

 トム君の慌てた声に驚き見ると、ラグが倒れかけたモリスちゃんを支えていた。

「どうしたんだ!」

 ドナが慌てた様子でツェリとこちらへやってくる。でも。

「寝てるだけだ」

 ラグが溜息交じりに言って、その小さな身体を軽々抱き上げた。

「きっと疲れちゃったんだね」

 言うとセリーンもモリスちゃんを見ながら「そうだな」と言った。

「私たちもあのタレメガネが戻ってくるまで休むとするか。……しかし腹が減ったな」
「そういえば……」

 私もお腹を押さえる。
 お昼に食べたきり何も口にしていないのだった。と、

「簡単なもんしかないけど、何か食べるか?」

ドナのその言葉に私たちは顔を輝かせた。

「じゃあ上に来てくれよ。――あ、悪い」

 そう言いドナは笑顔でラグに両手を差し出した。

「モリスに先に言われちまったけど、アタシ達を守ってくれてありがとな」
「…………」

 例によって彼は何も答えずにモリスを彼女に預けた。

「あ、ちょっと待ってろ。薬持ってくる」

 彼の全身の傷を見たドナはモリスを抱えながら足早にツリーハウスの方へと向かった。
 ドナは彼が“ラグ・エヴァンス”だともう知っているはず。それでも何も変わらない彼女にほっと安堵する。