白石圭。

今回の実験のペアだ。

薬学部であるわたし達はこうやって週に三回程、実験が行われる。

ペアは実験の項目ごとに変わる。

今回は白石君。

同じクラスだけど喋ったこと無いんだよね。

あまり学校にも来ないし。

少しばかり不安が残る中、張り出された座席表を確認して所定の場所に着く。


「あー如月さんでしょ。今回の俺のペア。よろしく〜。」


ゆる〜く挨拶をされた。


「よろしくね…って白石君、寝癖!」

「え、嘘っ。」


話によると今日も寝坊して午前中の授業はサボったそうだ。

学校に来たのはついさっき。

おそらく慌てて家を出てきたのだろう。

寝癖を気にして後頭部を触るのは白石君の大きな手。

角ばってて男の子って感じ。

いや実際そうなんだけど、なんていうか、こう、魅了される。

それに肩幅広いし身長も高いし後カッコいい。

テキトーに白衣を羽織ってボタンもしないで腕まくりして、だらしない格好であるのにそれさえもかっこよくてつい見惚れてしまった。


「なーに如月さん、俺に見惚れてた?」

「ちっ、ちが!」

「こーら、圭。あんまり虐めるな。如月さん困ってるだろ。ごめんね、俺は鈴木孝太郎。圭の友人だ。」


鈴木君と白石君。

中々に良いコンビだ。

そういえば鈴木君のペアって…。


「よー!鈴木!実験よろしく頼んだぞ!」


林玲だ。

初対面とは考えられない仲の二人。

玲のことだからどこかで仲良くなっていたのだろう。

それにしてもなんでコミュニケーション能力。

特にコミュ障という訳ではないが、相手に対して少し距離を置いてしまうというか、心のどこかで友達と知り合いという線を引いてしまうところが昔からあった。

だから玲のその気さくな性格には憧れを抱いている。


「ねぇ如月さん、その白石君って呼び方やめてくんない?」


急なお願いだ。


「なら、白石?」

「違うな。」

「しろちゃん?」

「なにそれ可愛いけど、しろちゃんって柄じゃないから違う。」

「圭太郎。」

「なぜに太郎付けた?ダサいから違う。」

「圭君。」

「まぁよしとするか。」


お許しが出た。

本当は呼び捨てで呼んでほしかったらしいが、知り合って数分の私には難易度が高すぎた。

それにこんなところ彼に見られたら…。

なんでもない。

圭君はただの友達だし、私の交友関係にだけは何も言われたくない。

せめてこの時間だけは守りたい。

この人達だけは絶対に。