藍の投げたぬいぐるみは大河の頭に当たり、床に落ちる。大河は「冗談ですよ」と言って藍から離れた。

「でも、こんな風に誰でも抵抗するんです。もっと散らかっているはずですよ」

「散らかる……」

藍は家に入ってからのことを思い出す。そして、大河に言った。

「調べてもらわないといけないことが増えたわ」



それから二日後、藍と大河、そして如月刑事と原刑事は水谷美雪の実家に集まっていた。藍たちの他にも、黒沼純一と青野一、福山美里がいた。

「美雪を殺した犯人がわかったんですよね!?」

青野一がそう言いながら、隣にいる黒沼純一を睨みつける。

「別れた女のことなんてどうでもいい。早く帰らせてくれ」

スマホをいじりながら黒沼純一が言う。それを青野一と福山美里が睨みつけた。

「集まっていただき、ありがとうございます」

藍が丁寧に頭を下げると、三人の視線が集まる。大河が緊張したように藍を見つめた。

「私は美雪さんを解剖しました。美雪さんの手足は縛られており、首には紐の跡がありました。私たち監察医も、警察も、他殺と思い込んでいましたが違いました」

藍は部屋にいる一人一人の顔を見つめ、続ける。

「美雪さんは、他殺ではなく自殺です」