黙祷をし、藍はメスを手に取る。そして服を着ていない遺体を見て、「えっ?どうして?」と声を上げた。

「どうしました?」

大河が声をかける。如月刑事と原刑事も遺体を見つめた。しかし、なぜ藍が驚いたのかわからない。

「このご遺体……妊娠の跡があります……」

水谷美雪は一人暮らしだと原刑事が言ったばかりだ。しかし、水谷美雪の体には妊娠の跡が残っている。水谷美雪は子供を産んだことがあるのだ。

「あ!水谷美雪さんは、二年前まで結婚をしていました。黒沼純一(くろぬまじゅんいち)さんという方が元旦那です」

「それをもっと早く言え!!」

手帳に書いたメモを見て原刑事が言い、如月刑事が「大事なことはちゃんと言え!!」と怒る。

「黒沼ってあの大きな家ですよね」

大河が記憶を辿り、藍に言った。どこの家よりも大きく立派な家だ。黒沼家はこの辺りではお金持ちで有名な家である。

「藍の実家がこの村にあるので、藍がここにいるのはわかる。しかし、なぜ医大生がいるんだ」