「ふふっ、懐かしい」

「だねっ。愛ぴょんと出会うまでは大好きなロリータファッションを着てるのに、いつも変な目で見られてつらかったけど、今は……」

萌ちゃんが私の目をまっすぐに見て、うれしそうに笑う。


「愛ぴょんのおかげで、もっともっと今の自分が好きになれたよ。だからね、愛ぴょんが悲しいときは萌が力になるって決めてるんだ」

「萌ちゃん……」


その言葉に背中を押されるように、私はぽつりぽつりと剣ちゃんと今日なにがあったのかを打ち明ける。

すべて話し終わると、萌ちゃんは私の手を両手で握った。


「萌の推理はね、ズバリ嫉妬じゃないかな?」

「え、あの剣ちゃんが!?」


面倒くせぇが口癖で、他人のことなんか興味なさそうなのに。

出会ったときの〝お前に関わりたくない〟オーラがすごすぎて、ちょっと信じられない。


「ケンケンは、愛ぴょんのことになるとすっごく過保護だもん。きっと愛ぴょんを取られたくなくて、守りたくて、その気持ちをうまく伝えられなかったんじゃないかな?」


それを聞いて、剣ちゃんが嫉妬なんてありえないと思いながらも、不器用な人だからうまく伝えられなかったのは納得できた。


「ま、ここで考えてもしょうがないよ! ケンケンにたしかめてみるのがいちばん!」


萌ちゃんはそう言って、私に鞄を持たせる。


「いつでも戻ってきていいからね。でも、萌はできれば向き合うことから逃げないでほしいなって思う」


そうだよね。

逃げてたって、なんの解決にもならない。

それに、剣ちゃんの気持ちなら、どんなものでも知りたいし、受け止めたいから。

萌ちゃんに励まされた私は、鞄を受け取って立ち上がる。


「私、剣ちゃんとすれ違ったままは嫌。どうしてあのとき剣ちゃんがあんなに怒ってたのか、理由を知りたい」

「その意気だよ、愛ぴょん。いってらっしゃい!」

「萌ちゃん、ありがとう。いってきます!」


自分の気持ちを鼓舞するように元気よく返事をして、私は外に出る。

すでに家に帰っているかもしれないけれど、私はとりあえず学園に向かって走った。

まだ学園に残ってるかもしれないし!

早く会いたい一心で足を動かしていると、ぽたっと頬になにかが落ちてくる。

顔を上げれば、その瞬間にドサーッと雨に降られてしまった。


「もうっ、なんでこんなときに……」


視界が悪くて危なかったので、お店の軒先テントの下に急いで入る。

けれど、悲しいことに全身はびしょ濡れだった。

寒さに震えながら、雨が止むのを待つ。

会ったら、なんて伝えよう。

まずはごめんね?

それとも、どうしてあんなことしたのかを聞くべき?

私の焦りを沈めるように降り続く雨の音が、気持ちを整理する時間を与えてくれた。

そうやって、つま先を見つめながら思考に耽っていると、コツンッという音とともに視界に見覚えのある靴が入る。

え、これって……。

ゆっくりと信じられない気持ちで顔を上げると――。