『教師と生徒は対等だ』


お父さんがみんなに丁寧に説いたことで、生徒や先生を始め、保護者たちの意識も変わり、学園長が交代した今も秩序が保たれている。

どんなときも、正しく人を導こうとするお父さんを、私は誇りに思っていた。



教室にやってくると、クラスメイトの間では転校生が来るという話題で盛り上がっていた。

席に着くと、斜め前に座っている眼鏡をかけた男の子が私を振り返ったので、あいさつをする。


「学くん、おはよう」


制服をきっちり着こなした彼――光園寺(こうえんじ)学くんはこの学園の現在の理事長の息子さんで、一見クールに見えるけれど学園愛の強い生徒会長だ。

緑がかった黒髪に中世的な顔立ちの彼は、落ち着いた物腰がどこか大人っぽい。

学くんとはこの学園の中等部からの付き合いで、私の親友のひとりでもある。


「この時期に転校してくるなんて、異例中の異例だな。前の高校で、なにか問題を起こしたんじゃないか?」


眉をひそめる学くんに、たしかにと思う。


「うちって中学から高校までエスカレーター式だもんね。成績が優秀か、家柄がいいか……。よっぽどのコネがないと、なかなか転入は受け入れられないかも」

「女子の話だと、すっごくイケメンだけど、なんか危なそうな雰囲気の男の子らしいよ」


私たちの会話に加わってきたのは、学くん同様に中等部からの親友、花江萌(はなえ もえ)ちゃん。

ふたりとは、奇跡的にずっと同じクラスだ。