男たちに連れ去られてしまった私たちは、頭の袋は外してもらえたものの、明かりもなく真っ暗な部屋に閉じ込められてしまった。


なにも見えない……ここはどこなの?

私、剣ちゃんと家に帰れるのかな。

お父さん、お母さん……会いたいよ。


「くそっ、ここまで袋かぶせられてたからな。どこに連れてこられたのか、見当もつかねぇ」


動けないでいる私とは違って。剣ちゃんは立ち上がると部屋の扉に手をつく。


「外側から鍵かけられてるな。窓もねぇし、出るとしたら扉からしか不可能だ。くそっ、どうするか……」


壁をつたって部屋の中を歩き回る剣ちゃんを見ながら、私は静まらない動悸にふうっと深く息をつく。

私も、脱出するためになにかしなきゃいけないのに……。

なんだろう、さっきから胸が重苦しい。

暗闇と冷たいコンクリートの床と壁、湿った空気。

その光景に私の中のなにかが警報を鳴らしている。

忘れたいと、心の奥にずっと封じ込めていた記憶が呼び起こされる――。


***


あれは、私が小学1年生のときのこと。

たしか、学校からの帰り道、男の人に声をかけられたのが始まりだった。


『お嬢ちゃん、このお人形が欲しくないかい?』


人のよさそうな笑顔で、その人はテディベアを差し出してくる。