「親父が無理やり、俺に習わせたんだよ」

そうだったんだ。
でも、剣斗くんがそばにいてくれたら頼もしいだろうな。

私はさっき、拳銃を持った男の人たちをひとりで倒してしまった剣斗くんの姿を思い出していた。


「剣斗くんが守ってくれるなら、うれしいです。これから、よろしくお願いします」

頭を下げると、剣斗くんはフイッとそっぽを向く。

「お前みたいな能天気女、守るとか……。この先が思いやられる」


それだけ言いはなち、去っていってしまう剣斗くんを呆然と見送る。

の、能天気?
たしかに、のほほんとしてるねって、よく周りから言われるけど……。


「まったく、あいつはまだまだ子どもだな」

苦笑いする剣斗くんのお父さんに曖昧な笑みを返しつつも、私は遠ざかる頼もしい背中から目をそらせなかった。