「おおっ、剣斗じゃん!」


すると、友だちのひとりが剣ちゃんに気づいた。

私たちはあっという間に、剣ちゃんの友だちに囲まれる。

緑のメッシュが入った銀髪に、まぶしいほどの金髪。

みんな髪が色とりどりだなあ。

あと、鼻ピアスはちょっと痛そう。

独創的なファッションの彼らに、私の好奇心はくすぐられまくりだ。


「剣斗の彼女か?」

「剣斗のくせにかわいい女捕まえやがって、生意気なんだよ。俺にも黎明学園の女の子、紹介しろ!」


友人たちにからかわれる剣ちゃんは「うるせぇ」と言いながらも、どこかうれしそう。


「こいつは俺と同じクラスの森泉愛菜だ。以上」


簡単に、私のことをみんなに紹介してくれた剣ちゃん。

みんなは「それだけかよ!」といっせいにツッコミを入れた。


「こいつのことは詮索すんな」

「なんだよ、剣斗にしてはガード固いじゃん。いつも彼女ができたって、嫉妬とかしねぇのに」

「彼女じゃねぇけど、手は出すな」

「ますます意外だな。付き合ってないのに剣斗が牽制するとか、愛菜ちゃん何者?」


剣ちゃんの友だち全員の視線が私に向けられる。

なんだか、尊敬の眼差しで見られている気が……。


「というか、剣ちゃん。どんだけ、彼女に興味がなかったの!?」


私は彼氏がいたことがないから、わからないけど……。

好きな人が別の異性と仲良くしてたら、嫉妬するものじゃないのかなぁ。

剣ちゃんは彼女が別の男の子と一緒にいても平気なの?

もし、私が剣ちゃんの彼女になっても……って!

私と剣ちゃんが付き合ってるていで妄想するなんて、どうかしてる。

ひとりで悶々としていると、剣ちゃんは不満げに私をチラッと見た。


「誰に対しても無関心なわけじゃねぇよ。特別気になる女には、自分でもどうかと思うくらい独占欲発揮するっつーの」


べーっと舌を出した剣ちゃんに、ドキッとする。

え、えっ、え!?
今のって、どういう意味でしょうか!

混乱している私なんてお構いなしに、素知らぬ顔をしている剣ちゃん。

さっきの発言の真意を説明してくれる気は、さらさらなさそうだ。


「おい剣斗、久々にやろうぜ」


友だちが剣ちゃんに向かって、ボールを投げる。

それを受け取った剣ちゃんは、いいか?と問うように私を見た。


「私も剣ちゃんがバスケしてるところ、見たいな」

「そーかよ。だったら、これ持ってろ」


剣ちゃんは上着を私に投げる。

それを預かって、私は友だちとバスケをする剣ちゃんを眺めた。