「剣斗、もう愛菜さんと会っていたのか」

「親父……」


その男性を見て不愉快そうに眉を寄せた男の子は、剣斗くんと言うらしい。

剣斗くんのお父さんは私を見ると、ほっとした顔をした。


「愛菜さん、無事でよかった。この様子だと、怖い目に遭ったんだろう?」


剣斗くんのお父さんは地面に倒れている男たちを見て、どこかへ電話をする。

どうやら、警察を呼んでいるみたいだ。


「愛菜さん、私は愛菜さんのお父さんとは親友でね。きみを守るよう頼まれているんだ」

電話を切ると、剣斗くんのお父さんはそう教えてくれる。

「え、そうなんですか?」


そんなこと、お父さんひと言も言ってなかったのに。

私が驚いていると、その男性は剣斗くんを見る。


「あれは警視総監である私の自慢の息子です」


警視総監って、警察の偉い人だよね?

すごい人と対面しているのだと思ったら、自然と背筋が伸びてしまう。


「愛菜さん、あなたを守るために剣斗を同じ学園に転入させます」

「ええっ」

「剣道三段、柔道黒帯、そのほかにも武術全般、たしなんでいます。ボディーガードとしては申し分ないでしょう」


警視総監の息子さんが私のボディーガードになるの!?
なんて、恐れ多い……。
お父さんも、事前に相談してくれればよかったのに。

あとで事情を聞かないと、と思っていると……。
剣斗くんはふてぶてしく言う。