「……!」


はっと我に返った様子の剣ちゃんが私の肩を押し返す。


「おまっ……なに、普通に受け入れてんだよ!」


剣ちゃんは息を荒げて、怒る。

どうして抵抗しなかったのか、私だって驚いてるよ。
私、剣ちゃんが止めなかったら、きっと……。

指で自分の唇に触れる。

……キス、してたと思う。

ドキドキしながら剣ちゃんを見つめると、その瞳は揺れていた。

無意識の行動に困惑しているのは、剣ちゃんも同じみたいだ。


「自分でもわからないんだけど、剣ちゃんならいいって思ったんだよね」

「それ、意味わかってて言ってんのか?」


どこか少し、期待を込めた言い方だった。


「え? だって、剣ちゃんが私を傷つけることなんてないし……」

「お前、それ本気で言ってんなら、俺のことなんにもわかってねぇな」


声のトーンが下がって、剣ちゃんの手が私の顎をクイッと持ち上げる。

そのまま、お互いの吐息が感じられる距離で剣ちゃんがじとりとにらんできた。


「さっきは止めてやったけど、次は本気ですんぞ」

「……っ、するって、その……」


慌てふためく私に容赦なく、剣ちゃんは唇を寄せてくる。


「実際にしねぇとわかんねぇ?」


囁くように言ってさらに顔を近づけてくる剣ちゃんに、私はぶんぶんと首を横に振る。


「わ、わかりました! ごめんなさい、許して……っ」


涙目になっていると、剣ちゃんがぐっと息を飲むのがわかった。


「その顔、計算してんじゃねぇだろうな」

「えっと、どんな顔?」

「男がイジメたくなる顔」


剣ちゃんの目がまた怪しく光った気がして、私は両手で顔をおおう。


どうしよう、どうしよう、どうしよう!
剣ちゃんがいつもと違って、なんか……。
色気が、驚異的なのですが。
もう剣ちゃんの顔、見れないよ……。

胸も呼吸もままならないくらい、ドキドキしてる。

窒息寸前の私に、剣ちゃんがため息をつくのがわかった。