「あれ、抱き枕じゃねぇ?」


まだ寝ぼけてるのか、ぼーっとしている剣斗くん。

いつも睨みをきかせてるのが嘘みたい。

無防備で可愛い、なんて……。
言ったら怒りそうだから、我慢がまん。


「うん、私は愛菜だよ」


にっこりと笑うと、剣斗くんの目はみるみるうちに見張かれていき……。


「どういう状況だよ、これは!」


発狂しながら飛び起きる剣斗くんに、私も身体を起こして説明する。


「朝食の時間なのに席にいないから、起こしに来たんだよ。そうしたら、剣斗くんが私と抱き枕を間違えたみたい」

「……あのなぁ、男の部屋に平然と入るな。ベッドにも近づくな」


念を押す剣斗くんに、私は首をかしげつつもうなずく。


「はーい」

「お前、その顔はぜってぇ納得してねぇだろ」


だって、ただ起こしに来ただけなのに。
なにがいけないんだか、わからないんだもん。


「わからねぇなら、教えてやる」


まるで私の心を読んだように、しびれを切らした剣斗くんが手首をつかんでくる。


「へっ……きゃっ」


そのまま、あれよあれよという間に、私はベッドに押し倒されていた。


「剣斗くん、これは……」


どういう状況?

困惑しながら剣斗くんを見上げていると、その整った顔が近づいてくる。