「ん、うるせぇ……」


気だるげにかすれた声をこぼして、剣斗くんは眉根を寄せると――。


「きゃあっ」


剣斗くんの腕が背中と腰に回って、そのままベッドに引きずりこまれる。


「わわわ!」

ぎゅううっと抱きしめられて、心臓が飛び跳ねた。

「け、剣斗くん……寝てるの?」


ドキドキしながら剣斗くんを見上げる。

じゅ、熟睡してる……。

そのことに、なぜかほっとする。

……って、私を抱きしめたのは剣斗くんなのに!
どうして私が、やましいことをしたみたいな気持ちにならなきゃいけないんだろう。


「ううっ、剣斗くん、起きてー!」


なんでも声をかけるけれど、剣斗くんはすやすやと寝息を立てている。

困り果てて、私は剣斗くんを見つめた。


あ、まつ毛長い。

間近にある剣斗くんの顔に、私はつい見入ってしまった。

髪も柔らかそう……触っちゃえ!

えいっと手を伸ばして、剣斗くんの髪をすいてみる。
わー、わー、さらさらだ!

感動しながら、寝ているのをいいことにあちこち触っていると、剣斗くんのまつ毛が震えた。


「んう、な……んだ」

剣斗くんは、ゆっくりと目を開ける。
しばし見つめあうと、剣斗くんはひと言。