「クリーンな政治家として有名な森泉を脅す材料を欲しがってる人間は大勢いる」

「そいつらに売り飛ばすか、身代金を要求するか。お前にはいろんな利用価値があるからな」


男たちは好き勝手にそう言うと、じりじりと距離を縮めてきた。

だ、誰か……助けて!

祈るように胸の前で両手を握りしめると、ぎゅっと強く目を閉じる。


「ったく、さっそく厄介事に巻き込まれてるじゃねぇか」


真っ暗な視界の中、耳に届いた低く乱暴な声。
瞼を持ち上げると、ドコッと鈍い音とともに男たちが次々と床に転がっていくのが目に入った。

「面倒くせぇ」


舌打ちをして、男から拳銃を奪ったのは私と同い年くらいの黒髪にスーツ姿の男の子だ。

中央で分けられた前髪の下には、見た者を圧倒するような鋭い瞳。

強面だけど整った顔をしていて、耳の銀のピアスがいかつかった。