「そう。それでね、子どもの頃ってなにかと突発的な行動をとるでしょ?」

「まあな」

「だから私が勝手に別荘を出て行って、ひとりでいるときに誘拐されたりしないようにロックがつけられたの」


きっと、たくさんお父さんとお母さんを不安にさせてしまったんだと思う。

この部屋を見てそれを思い出してしまった私は、胸が締めつけられて苦しくなる。

そんな私の横で話を聞いてくれていた剣斗くんは、片膝を立てるとそこに頬杖をついた。


「それなら、お前の親父さんが過保護にする理由もわからなくはねぇな」

「うん。でも、今はわりと自由にさせてもらえてるんだよ。真っ暗な道を通ったり、見るからに危険そうな場所には行かないようにしてるし」


それでも心配だったから、お父さんは私に剣斗くんをつけたんだと思う。


「剣斗くん、理由はなんであれね。私のボディーガードを引き受けてくれてありがとう」

「なんだよ、急に」


目を点にしている剣斗くんに向き直った私は、正座をして頭を下げる。


「私がまた誘拐されたりしないか、お父さんもお母さんも怖いの。その怖さを剣斗くんは軽くしてくれたから」

「お前……自分の安全が守られるからじゃなくて、親のために頭下げてんのか?」

信じられないといった様子で、剣斗くんは口を半開きにしたまま固まっている。